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認知症の妄想で一番、多いのがこの「物盗られ妄想」です。


認知症の方が一番心配なのは食べることと、お金です。記憶が弱っているので、自分の身を守る様々なものを自分に結び付けておくことができません。

自分には連絡すればすぐに来てくれる娘がいるとか、お金は長男が管理してくれるとか、ご飯は毎日お嫁さんが作ってくれる、というような記憶があれば、

お金や食べるものに、それほど執着しなくてもいいはずです。

患者さんには、こういう記憶が乏しいので、食べものやお金がとても重要になるわけです。食べものやお金は、直接的に身を守ってくれるものですよね。

<嫉妬妄想もかなり見られますが、やはり配偶者のことも気にかかるのでしょう>

患者さんは、お金のことが心配でたまらないので、貯金通帳などをしまいます。しまっても、しまっても心配でまたしまい直します。しまった場所がわからなくなるまでしまい続けると言ったらいいでしょうか。

そうして、見事にしまった場所がわからなくなります。

そうすると、患者さんは誰かに盗られたと思うのです。患者さんの世界は狭くなっているので、誰か泥棒が入ったと言うよりも、ご家族など身近にいる人を疑うのでしょう。

これを「物盗られ妄想」と言います。

認知症の患者さんは、被害妄想っぽくなっています。この妄想に、リスパダールなどの薬(=非定型抗精神病薬)が効果があることを考えると、物が無くなったことを合理的に説明しようとした結果というよりも、やはり病的と言えるでしょう。

もっとも、完全に病的というよりも理解できる部分も多いと思います。認知症になるまでは、家族や周囲の人々が尊敬し、丁重に接してきたのに、どうしても扱いは以前とは変わってぞんざいにもなっていることも、被害感情の原因かもしれません。


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2011.11.29 / Top↑
「夕暮れ症候群」とは、


アルツハイマー型認知症の方にしばしばおこります。夕方になるとそわそわと落ち着かなくなり、「家に帰ります」と言って帰り支度を始めたする症状です。実際に外に出て行ってしまうと、道に迷って帰れなくなってしまいます(=これは徘徊です)。

認知症の患者さんの記憶は、新しいところから障害されます。一番覚えていないのはついさっきのことです。その割に一月前のことや、5年前のことは覚えています。

お歳をたずねると、ほとんどの方が実際よりも若く答えます。80歳の方にお歳をたずねて、45歳と答えたら、ざっと35年間の記憶が無くなったと考えられます。

その間に家を改築したり、転居したりすると、今いる場所が自分の家ではないように思って「家に帰る」と言うわけです。

認知症の患者さんの記憶は変動します。夕暮れ時には意識レベルがやや下がって軽いせん妄のようになるため記憶障害も悪化するのでしょう。

そんな時には患者さんの言葉を否定したり、説得しようとせずに、上手に受け流したり、「もうすぐご家族が迎ええに来るはずです」と言ったり、別のことに意識を向けさせるのがいいでしょう。


2011.11.16 / Top↑
認知症の随伴症状(=BPSD)とその治療について。


<BPSDとは>

認知症の症状には中核症状と随伴症状があります。

・中核症状 (記憶障害、見当識障害)すべての患者さんに起こる
・随伴症状 (=BPSD)80%の患者さんに起こる

ものです。

中核症状は、脳細胞が死ぬことで起きます。
BPSDは、それに患者さんを取り巻く環境や、介護者との関係、脳の伝達物質の異状が加わって起きます。
BPSDとは、認知症に随伴する、ビヘイビラル=行動と、サイコロジカル=精神の症状のことです。

認知症で患者さん本人や、患者さんを抱えるご家族が苦労するのは、むしろBPSDです。

BPSDの代表的なものとしては以下のものがあります。


(精神症状)
・妄想(もの盗られ妄想、嫉妬妄想など)・幻覚(幻視)
・睡眠障害
・抑うつ・不安・焦燥

(行動異常)
・攻撃的行動(暴力、暴言、拒絶、逸脱行動)
・徘徊
・不潔
・異食
・大声

<BPSDの治療>

BPSDを悪化させる要因には(H19年厚労省補助金、ぼけ予防協会)、以下のものがあります。

・薬剤(37.7%)せん妄の原因・・抗パーキンソン薬、抗コリン薬、抗不安薬、抗うつ薬、ジギタリス、βブロッカー、利尿剤、H2ブロッカー、ステロイド。
・身体合併症(23%)転倒や骨折、脱水。
・家族・介護環境(10.7%)

まず、これらではないかを確認することが必要です。H2ブロッカーは胃潰瘍の薬です。ジギタリスやβブロッカーは心臓の薬なので注意が必要です。

また、
認知症では、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやGABAが減っており、これがBPSDの原因にもなっています。

つまり、
セロトニンやGABAの低下によって患者さんは、不安や憂うつ、ちょっとしたことでイライラしやすくなっているわけです。

BPSDの治療には、非薬物療法と薬物療法があります。


<非薬物治療>

こちらが基本です。

アルツハイマーの患者さんは、愛想がよく、礼節も保たれている方が多いです。認知症になると、そのことを恥じて「ちょっと忘れっぽいけれど、困っていません」言うことが多いです。

記憶障害が進行すると、患者さんはさまざまな失敗をし、そのことを他人から指摘されて傷ついています。患者さんは、恥をかきたくないという思いによって取り繕おうとするのです。これはもっともなことでしょう。

我々は、記憶によって周囲の世界とつながっています。家や家族、社会的な肩書などによって。記憶が失われると、人は世界とのつながりがなくなり孤立して、孤独になります。

それまで、社会的に重要な役割を担って尊敬されていた方にとって、急にぼけ老人扱いをされると、周囲への反発や被害感情も生まれるでしょう。

そんな気持ちもあってもの盗られ妄想が起きるのだと思います。

非薬物治療は、まずそんな患者さんの気持ちを理解することが必要です。患者さんは焦りや不安、気遅れを感じています。注意や叱責はせずに、患者さんの良いところを探して認めましょう。できないことをむりに訓練しないでさりげなくサポートしましょう。なによりも患者さんを尊重して優しく接することが大切です。

ですが、そんなご家族の努力にも限界があります。その場合には薬物療法も必要になります。

<薬物治療>

・抑肝散・・・セロトニンとGABAを調節することで、興奮や不安を鎮めます。

・タンドスピロン・・・セロトニン1A部分作動薬です。非ベンゾジアゼピン系なので、筋弛緩作用や、依存性が少ないのが特徴です。攻撃性や興奮に効果があります。

・睡眠薬(ゾルピデム、クワゼパム、トラゾドン)。これらはふらつきが少ないものです。

・SSRI(セルトラリン、フルボキサミン)抗うつ薬です。

・非定形抗精神病薬(リスペリドン、クエチアピンなど)は、錐体外路症状の少ないものが推奨されます。

薬物療法は必要最小限にすることが必要です。過鎮静やせん妄の原因になるからです。

<これは、11月19日(2011年)に甲府市の総合市民会館でおこなわれる、認知症セミナーという市民公開講座でパネリストの一人として発表する内容の骨子です>


2011.11.08 / Top↑
認知症を取り巻く問題には様々なことがあります。


甲府医師会から声をかけていただいて、認知症サポート医の講習会に参加しました。すでに全国には1600人の認知症サポート医がいるそうです。

<この講習会は、厚生労働省の「認知症対策総合支援事業」に基づいて、独立行政法人国立長寿医療研究センターが委託されて、各地の医師会が参加者を募って行われているものです>

認知症サポート医は、かかりつけ医と専門医の橋渡し的な位置づけです。講習に来られた方は、精神科や神経内科など主体的に認知症にかかわる科の医師と、その他一般内科や整形外科などの医師が半々といったところでした。

二日間の講習会でした。サポート医の位置づけ、診断、治療に関する講義と、小グループでのディスカッションなど多岐にわたる中身の濃い講習会でした。

以下は、この講習会を受講して感じた認知症医療に関する問題点です(僕が漠然と感じたものも含まれています)。

現在の保険制度では、認知症があだ花のような位置にある点です。慢性の進行性の病気で、診察には時間がかかるのですが、高血圧や糖尿病ような内科の指導料がとれないために、大勢の患者さんを診ると採算割れしてしまいます。

また、認知症の周辺症状には抗精神病薬が使われることも多いのですが、これが認知症の病名だと正式には使用できず、病名に苦慮することもあります。

ビタミンB12欠乏症や、甲状腺機能低下症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症など、認知症に類似した疾患を除外しようと検査をする場合に、地域によっては保険が使えないそうです。

介護保険が主に福祉系の人材によって運営されている現状があり、十分な医療的なケアがなされていないこと。患者さんにとっては医療的なケアが必要であっても、家族の希望でヘルパーさんによるお掃除が優先されるような場合も多くあります。(介護保険が「お手伝いさん」の斡旋になっているという声も上がりました)

有効性のあるケア会議を開くことが実際には難しい。経済的な裏付けがないこともあって、なかなか人が集まれません。

認知症に関しては、地方ごとに取り組み方には大きな差があります。上手に運営されているところは、採算を度外視した少数の意欲的な個人に先導されているのが現状のようです。

また、専門性の高い医療施設でも、診断までは担うものの治療はできない場合が多いところも問題です。

今後、予防、診断から治療までを一貫して担うことのできる施設が充実する必要があるでしょう。地域包括支援センターの役割がそうかもしれません。

いずれにしても財源を必要とします。行政を動かすには、説得力のある具体的な数字(認知症を予防することで医療費を抑えることができるとかでしょうか・・)を元にした、働きかけ(=圧力)や、国民の声(これにはマスコミの協力も必要でしょう)が必要でしょう。

現在、アルツハイマー型認知症に使用できる薬剤が増えました。薬を作っている会社には大きな資本力があり、これを梃子に政府が動くということもあるのではないでしょうか。


<もっとも、こういうことは、制度とか資格(認知症サポート医という名称もそうです)の問題ではないでしょう。以下に運営するかだと思います。大切なのは、やはり人と人のつながりではないでしょうか>


2011.08.02 / Top↑
アルツハイマー型認知症の新しい薬が発売になりました(2011年6月8日)。


第一三共株式会社から出る、メマリー錠(一般名:メマンチン塩酸塩)です。これまであった、アリセプト(一般名:ドネペジル)とは効き方が違うので、両方使うことでよく効くようになるそうです。


以下は専門的になります。

ドネペジルは、「コリン仮説」に基づいて、脳のアセチルコリンを増やす薬でした(アセチルコリンの分解を阻害して)。

メマンチンは、「グルタミン酸仮説」に基づいて、グルタミン酸系に働きます。

<ここで注意してほしいのは、「仮説」という点です。もちろん理由はどうあれ効果があればいいのですが>


「認知症のグルタミン仮説」について。(統合失調症にも「グルタミン酸仮説」があります)

グルタミン酸は興奮に関係がある神経伝達物質です。

グルタミン酸の受容体の一つにNMDA受容体があります。これは海馬にたくさん分布していて、記憶に関係しているとされています。アルツハイマーになるとこの受容体が減るのです。

ということは、NMDA受容体を増やせば効果があることになります。ふつうは。

ここからが、やや眉つばというか、こじつけというか、

アルツハイマーが進行すると、その減ったNMDA受容体が異常に興奮して、神経細胞を破壊するのだそうです。(まるで、見てきたような話ですが)

メマンチンはこの異常なNMDA受容体の興奮だけを抑え(=NMDA受容体拮抗作用て、)正常な伝達は抑えません。そのために記憶障害が改善するそうです。

<NMDAをブロックする薬には、プレガバリンやケタミンという痛みどめ(この強いのがPCP=フェンシクリジンという幻覚作用の強い薬です)があります。ケタミンがうつ病に効果があるという報告もあります>

<SSRIのフルボキサミンは、シグマ1受容体への作用が強いですが、シグマ1はNMDAを促進してうつ病の認知機能やうつ状態を改善します。抗精神病作用もあるとも言われています。これはメマンチンとは反対の薬理作用です。効果は似ていますが>

(うーん、はっきり言って、認知機能にはNMDAをブロックすると改善するのか、促進させるといいのかはっきりしません)

メマンチンの投与の対象となる疾患は、中等症以上のアルツハイマー型認知症です。ドネペジルの無効な患者さんや、ドネペジルの効果が不十分な患者さんにドネペジルと併用で投与します。

主な副作用はめまいです(4.7%)。精神興奮の報告もあります。

パーキンソン病の治療薬のアマンタジン(商品名シンメトレル。これはA型インフルエンザにも効きます)と似た構造です。アマンタジンのような幻覚などのの副作用はないようです。


<アリセプト(ドネペジル)は、失神の副作用がまれにでます。これまでに僕自身の経験では、失神のために3人がアリセプトの服用を中止しています。救命救急病院に搬送したこともありました。こういう患者さんがまずメマンチンの適応になるのでしょうね>

正直な話、使ってみないと効果は未知数です。副作用のめまいで転倒して、大腿骨頚部骨折する危険はどの程度なのでしょうか。これが一番の心配です。




2011.06.08 / Top↑

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